厚労省「水質基準逐次改正検討会」への見解表明(1/30)

PFAS市民連絡会共同代表、右から伊波義安、町田直美、桜井国俊
2023年1月30日、沖縄県庁記者クラブに代表、事務局、幹事など10名が参加

厚生労働省「水質基準逐次改正検討会」御中      2023年 1月30日

有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会

共同代表:伊波義安、桜井国俊、玉那覇淑子、町田直美

水道水中のPFAS暫定指針値見直しについて(要請)

2022年6月15日、米環境保護庁(EPA)は水道水に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の4種について、その生涯健康勧告値(以下「勧告値」という)を劇的に下げた。従来の勧告値に比べ、PFOAが17,500倍、PFOSが3,500倍、毒性が見直され、勧告値はPFOAが0.004ng /L、PFOSが0.02ng /Lとなった。

こうした規制強化の動きは、欧州でも進められている。欧州では2020年、米国に先がけて欧州食品安全機関(EFSA)が、PFOS、PFOA、PFNA、PFHxSの4種類のPFASについて、耐容摂取基準を大幅に削減している。デンマークは他国に先駆けて2021年7月にこのEFSAの評価をもとに、飲料水の基準を2ng /L(4種類のPFASの合計)に設定した。

この欧米の知見の真価は、毒性評価が動物実験からヒト疫学調査に変わったことだ。環境調査、健康調査、除染、汚染者責任の追及など、世界は大きな政治・経済的課題に直面している。PFASは全人類にとっての脅威となっている。

厚生労働省は、EPAの勧告値を受け、水道水のPFAS暫定指針値見直しを始めた。これまでの指針値は、耐容1日摂取量をEPAと同様に体重1kgで20ngとした。そして、日本独自の計算方法で50ng /Lを導いたのである。これを踏襲すれば、日本はEPAより小さな指針値を出さなければならない。EPAは、ヒト疫学調査に基づいており、尊重しなければならないからである。

昨年9月にWHOが初めて飲料水の暫定ガイドライン値案を発表した。これは甘すぎるものでPFOS、PFOA個々で100ng /L、PFAS合計で500ng /L。WHOは「暫定ガイドライン値は健康影響に基づいて導出されていないが」「現実的な視点から(中略)飲料水でのモニタリングとPFAS除去は8節で示されたように複雑で、多くの低・中所得の地域では、実装が不可能なものであり、費用のかかる」ことを提案理由としている。(1月24日、水質基準逐次改正検討会配布資料<資料1参考1「9.2暫定ガイドラインの導出」>)

WHOのこのガイドライン値は、規制強化に向かう世界の趨勢に逆行するもので、PFASの健康影響に取組む116名の科学者が連名で、WHOの草案に大幅修正か撤回を求める意見書を公表した。科学者たちは「WHOは科学的根拠にもとづくガイドラインを制定すべきであり、汚染者である化学メーカーに浄化費用の金銭的責任を負わせる仕組みを確立することが必要である」と主張している。

2022年6~7月、「PFASから市民の生命を守る連絡会」は、京都大学の原田浩二先生や医療関係者の協力を得て、6市町村住民387名のPFAS血中濃度検査をおこなった。この結果によると、沖縄県民のPFAS(PFOS、PFOA、PFHxS)血中濃度は、環境省2021年全国調査より、放置できない高さで、水道水をそのまま飲んでいる人はPFAS濃度が高い傾向が見られ、検査した387人のうち27人が、ドイツの管理目標値HBM-Ⅱを超えている。また、市民団体「宜野湾ちゅら水会」が普天間基地に隣接する小学校土壌から米国EPAの基準値比で29倍のPFOSを検出した。

2023年1月24日に開催された厚生労働省「令和4年度第2回水質基準逐次改正検討会」は、WHOの暫定ガイドライン案を紹介するだけで、同案を批判的に検討する姿勢が全く見られず納得しがたいものであった。世界の科学者や公的機関がPFASと多くの疾患の関連を指摘していることに留意すべきである。

以上を踏まえ、以下要請する。

  • 飲料水中のPFAS指針値は、欧米にならい、科学的根拠(ヒト疫学調査など)に基づいたガイドライン値を制定すること
  • PFAS汚染の実態を解明するために、多くの国民PFAS血液検査、疫学調査、健康調査を早急に実施すること
  • 広範囲の水道水、土壌、地下水、河川、沿岸海域および、農産物、海産物のPFAS調査を実施すること

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